2004年10月08日

[未来への提言・琵琶湖市民大学から]/5 NGO代表・寺川庄蔵さん /滋賀

 ◇NGO「びわ湖自然環境ネットワーク」代表・寺川庄蔵さん
 ◇自然に配慮したレジャーを−−水上バイク禁止の国も
 市民、学生のための環境連続講座「合宿琵琶湖市民大学 琵琶湖の20年後を考える」(淀川水系の水質を調べる会、20年目の琵琶湖調査団主催)=8月26〜29日開催=での講義の詳録。5回目は、NGO「びわ湖自然環境ネットワーク」代表の寺川庄蔵さんの「水上バイクと外来種問題から見た琵琶湖の現状と未来」。【構成・服部正法】

 03年4月に「琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」が施行された。いわゆる「琵琶湖ルール」の誕生だ。条例が出来た経緯とその内容、残っている問題について論じたい。
 条例では、騒音防止の観点から規制水域内でのプレジャーボートは航行禁止となり、命令違反者は30万円以下の罰金と定められた。これ以前には水上安全条例などで速度などが規制されていたが効果はなかった。そこでこの条例が生まれたのだが、十分とは言えないのが実情だ。
 たとえば航行規制水域は、湖岸から350メートルまでで、なおかつ住居の集合地域、病院、学校のそばなどとなっている。県や業界団体などが決めた「マナーズブック」では規制水域(徐行)は400メートルだったのだから「後退」したともいえるのではないか。航行時の騒音規制値も、通常の住居地域の環境基準より高めに設定されており、琵琶湖を道路とみなしているのでは、と疑ってしまう。さらに環境対策型を除き2サイクルエンジンの使用を禁じたが、使用者には最長で5年もの長い猶予期間が設定されているのだ。
 条例ではまた、釣り上げたブルーギルやオオクチバス(ブラックバス)などの外来魚の再放流の禁止「リリース禁止」も定めた。しかし釣り客による釣り具の放棄など、問題は残ったままだ。琵琶湖では湖底に沈着する釣り具の量が年間10トンに上るとの推計もある。プラスチック製のワームは環境ホルモンを発生させるとも言われ影響が懸念されるが、条例では何の規制もないままだ。
 水上バイク問題をさらに細かく見てみよう。彦根の新海浜で、水上バイクを湖に運ぶために防風林が抜かれたケースが以前大きく報じられたが、湖岸が荒らされ緑地帯が減少する被害は問題だ。
 さらに深刻なのは水質汚染。水上バイクは非常に環境への負荷が大きい乗り物だ。米国立公園事務所は、水上バイクが「測定可能なほどの水質悪化」をもたらすこと、利用により発がん性の疑いのあるMTBEなどが健康に危険なレベルで水から検出されることなどを指摘。すでに水上バイクは米国のほぼすべての国立公園、スイスのすべての湖で禁止にもなっている。
 これらのことから水上バイクの問題を県に訴えた。しかし状況は変わらなかったため、われわれは01年夏に独自調査に踏み切った。日曜の夕方、バイクの活動水域で取った水からは、米カリフォルニア州の健康基準と同程度のMTBEが検出された。浄水場の取水口付近での高い検出値は、健康被害が生じる恐れを示すと言える。私たちは県に安全性が確認されるまで航行禁止措置にすべきと要請した。県も調査を行った。日曜の午前とか平日の調査で、数値は同州の基準値を大きく下回ったり、検出されなかったりという結果だった。県が水上バイクが走っている時間帯をあえて外して検査したようにも思え、その点も後に追及した。
 また99年に旧運輸省が、当時水上バイクがよく集まっていた能登川町の大同川河口付近で日曜の午後に調べた際には、最高値で環境基準の1.8倍のベンゼン、カリフォルニア州健康基準の3倍以上のMTBEが検出されていたのに、県に一切報告していなかったことが分かった。業界は十分な技術開発を待たずにバイクを発売し、旧運輸省は排ガス規制などを設けないまま。さらにデータは明らかにせず放置してきた。このことを深刻に受け止め、われわれは政府などに対し適正な対策の早期実施などを求める要望を出した。そして自分たちの手で条例を作ろうと動き出した。
 市民側が作った条例案と実際にできた条例を比較すると、市民案は琵琶湖での「水上バイク全面禁止」「釣り用具の放棄禁止」などをはっきりうたっている点が進んでいる。実際の条例では違反者の罰金などの規定があっても実効性はあまりない。警察が船で巡視し注意をしたりしているが、条例では厳しい指導はできないのが現実だ。
 全国の水辺が同様の問題を抱えている。今年6月には富士五湖の本栖湖でシンポジウムを開催。「水辺の環境とレジャーを考える全国連絡会」を立ち上げた。自然への配慮を欠いたレジャーの禁止や制限を行うための法整備が必要だ。バギー車やエンジン付きパラグライダーなどによる新たなレジャー被害も発生してきている。今後は、「エゴレジャー」から水辺を守る「エコツーリズム」に転換していくことが必要だ。(次回は14日に掲載予定)
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 ■人物略歴
 ◇寺川庄蔵(てらかわ・しょうぞう)
 1944年志賀町生まれ。県立堅田高校卒業。62年に滋賀銀行に入行。83年に「比良の自然を守る連絡会議」を発足させ代表。90年、「びわ湖自然環境ネットワーク」を結成。同ネットワークは「琵琶湖のレンジャー」をモットーに、水上バイク問題、ヨシ帯再生活動、魚ののぼれる川づくり活動などに精力的に取り組んでいる。

10月7日朝刊 
(毎日新聞)

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Posted by DODGE at 2004年10月08日 11:40 in 自然環境関連

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