2004年08月26日

ジェラルド・スインドル & マーティー・ストーン特別インタビュー

 ラッキークラフト社とポパイの共催による大森貴洋さんのバスマスター・クラシック優勝記念記者会見が、8月21日にアングラーズインにて行なわれた。この会場には、今季BASS CITGOバスマスターツアーにてアングラーオブザイヤー(AOY)を獲得したジェラルド・スインドル、そして同ツアー第1戦優勝者のマーティー・ストーンも大森さんと共に姿を見せ、共に記者会見を行なった。この3名はラッキー・クラフトU.S.A.の契約プロである。ツアー第6戦で優勝したケリー・ジョーダンを含め、まさに今季のラッキークラフト・チームは見事な活躍ぶりだったといえるだろう。メディアを対象とした記者会見や一般向けのセミナーで質疑応答がなされたが、basswaveは独自に切り込んだインタビューを行なったので、ここではその際のもようをお伝えしよう。

basswave:G(ジェラルド・スインドルの愛称)、久しぶりですね。お会いするのは3年ぶりくらいですか?
ジェラルド・スインドル:それくらいになるね。君が(大阪で開催された)フィッシングショーに顔を見せていれば、もっと会えていたよ。今回で来日は3回めになる。日本の夏も暑いな!

basswave:マーティーは初来日だと思いますけど、はじめまして。
マーティー・ストーン:Nice to see you !。昨日、テレビ(ESPN)の撮影で琵琶湖に出たんだ。いいレイクじゃないか。ウイードとかマンメイド・ストラクチャーも多いし、バスも多い。なによりバスがヘルシーで、グッドシェイプだった。私は数尾釣ったから日本のバスのコメントができるけど、ジェラルドはそんなに釣ってないから、コメントを聞くのは難しいぞ(笑)。
ジェラルド:琵琶湖のバスは難しかった。セミナーでも話したけど、私たちアメリカ人アングラーは日本人の釣り方を学んだほうがいいね。スローで丁寧なアプローチとか、研究熱心なところを。
マーティー:アメリカ人は……私もそうだけど、私たちの多くはシャローでテンポのいい釣りをする。琵琶湖も広いがアメリカのレイクはもっと広大だ。だから、スローに攻めていてはいくら時間があっても足りない。ある程度スピードに乗せてエレキを踏んで、“ここだっ!”っていうスポットにルアーを送り込んでいくアプローチが必要不可欠なんだよ。
ジェラルド:そんなアプローチも悪いとは思わない。ただし、プラクティスでいいエリアを見つけてあるんだったら、ホントにいいスポットではもっと丁寧に時間をかけて攻略してもいいはずさ。もしバスがそこにいなけりゃ、時間の無駄かもしれないけど、まずは(そこにバスがいると)信じることが先決だ。

basswave:セミナーの中で「コンフィデンス(自信)とはなんですか?」という質問がありました。メンタル(精神的)な強さの重要性も質問されていましたが、バス釣りにおいて、メンタルな部分はパターンを立てる上でどれくらい重要なんでしょうか?パーセンテージで表せますか?
ジェラルド:私はバス釣りの大部分がメンタルだと思うよ。
マーティー:まずプラクティスが終わって本戦の前夜、初日のプランを立てるだろ? この時点でフィジカル(肉体的)な部分はひとつもない。頭でゲームプランを練って、試合中も考えて釣りをしている。キャストとかフッキングは確かにフィジカルだけど、それも頭から指令を出している。だから試合が終わると、肉体的に疲れたな〜というより、頭が疲れた感じがする。何も考えずにボーッとしたい気分っていうヤツさ。
ジェラルド:ただし肉体的に疲れないかって言ったら、それはウソになる。備えあれば憂いなしってヤツで、どんな状況、どんな体調でも闘えるように私たちはジムに通ってるんだよ。

basswave:ジムってワークアウトするためのジムですか?
ジェラルド:そうだよ。ダンベルを上げたり、エアロバイクをこいだり、週5日、1回2時間のサイクルで鍛えている。身体が資本の“競技”だからね。その競技を仕事として生きているんだ。これくらいやらないと、勝てないんだよ。中には、「そこまでやらなくても」とか、「その2時間を使えばもっとプラができる」というアングラーがいるが、頑丈な身体があるから集中力が切れそうなシチュエーションやコンディションでも持ちこたえられる。それがコンフィデンスに繋がるんだよ。

basswave:特にどこを鍛えるんですか?持久力的な部分ですか?
マーティー:持久力を高めるのは大事だね。自転車運動はエアロビック・エクササイズ(有酸素運動)だからね。今は軽いロッドが多くなったけど、少し前のフリッピングロッドは重くて、1日中持っているのも大変なくらいだった。だから腕を鍛えるのもいいが、私は背中を重点的に鍛えている。シャープなフッキングはどんな状況でも求められるからね。

basswave:一般的に、バス釣りといえば「南部の腹の出たオヤジの遊び」程度の認知だったと思いますが、若い世代のアングラーが大勢出場するようになって、だいぶん考え方が変わってきたんですね。2人はグッドシェイプですよね。
ジェラルド:面白いことに、私の場合、こうやって身体を鍛えてグッドシェイプを保っていたら、オークリー社(サングラスメーカー)からスポンサーしたいとオファーがあった。彼らは私の体型を見て、契約の判断をしたんだって。このトーナメント・シャツを脱げば、いい体格なのがわかるよ(といって、チラッと中を見せる。タイトシャツの下に筋肉質の肉体が見えた)。

basswave:(ジェラルドがカントリーミュージックファンだと知っていて、カントリー界の男前+筋肉質で有名な)ティム・マッグロウみたいですね。
ジェラルド:まぁ、アイツも俺にはかなわねぇがな(笑)。

basswave:今季バスマスターツアーは1〜3月に開催されて、4〜6月にElite 50が開催されました。特に今年のツアー戦は春のプリスポーンを想定したスケジュールだったと思いますが、実際には寒かったり、雨が降ったり、雪も降ったり、釣りをする状況としては最悪に近かったと思います。メンタルをカバーするためにも、肉体改造は必要そうですね。試合が過密でしたが、スケジュールの面でキツイと感じたことはないですか?
ジェラルド:キツイよ(苦笑)。でも現在BASSはESPNと二人三脚で進めている。ESPNは1〜6月の間に撮影して放送するプランを持っているんだ。その後のシーズンは別のスポーツに力を入れている(注:アメリカのプロスポーツはエンターテイメント性を高めるため、シーズン性が求められる)。彼らはバス釣りを他のスポーツと劣らない競技にしようと、制作面にスゴく力を入れている。だからスケジュールは彼らの方針とそれに合意したBASSの方向性だから仕方がない。クラシックのビデオを見ればわかるよ。ホントに華やかだから。まぁE50は1ヶ月1試合ペースだったから、ツアー後はだいぶん楽になった。


basswave:E50は今年からスタートした新シリーズでしたが、出場してみてどうでしたか?
ジェラルド:メチャメチャ楽しかった。スタート時間が遅い分、ウエイインも遅い。だから、ファンが仕事が終わってからでもウエイインとか表彰式を観戦に来られるんだ。

basswave:いくらウエイインの時間が遅くなっても、朝は早く起きないといけないし、朝食は選手が揃って食べるんですよね?
ジェラルド:一緒に食べるのも楽しいよ。

basswave:E50のクオリファイ方式には生涯獲得賞金枠があり、ベテランアングラー……いわゆる“オールド・ボーイズ”も多く出場していますよね。彼らとともに競技するのはどんな感じですか?
ジェラルド:ツアーで普段から顔を合わせる選手もいるけど、E50は出場選手数が少ないから、会いたくなくても会うしね(笑)。私たちは気にしてないけど、“オールド・タイマー”たちは若いアングラーが嫌いみたいだよ(苦笑)。

basswave:なぜ嫌がられるんですか?
ジェラルド:俺たちがウルサイからだよ。

basswave:ウルサイって、もしかして、選手全員で一緒に食べる朝食の時ですか?
ジェラルド:ウヒヒヒヒ(笑)。

basswave:それは誰だってウルサイと怒るはずです。で、オールド・タイマー……と呼びたくないですが、リック・クランは最近調子がよくないですよね。クラシックも数年出ていません。
ジェラルド:4年出ていない、4年だよ、4年。もうリックはダメだ。

basswave:ダメってどういうことですか?何か勝てない理由があるんですか?
ジェラルド:(頭を指さして)リックはここだよ。集中力に欠けてるんだ。メンタルが弱くなったと感じている。バスを見つけだす能力はいまだ衰えていないし、いいエリアに陣取っているよ。でも、いくらいいエリアにいてもバイトさせられないのは、もう致命的だ。技術が落ちたとも思えない。だったらメンタルだけだろう。

basswave:では今後、リックがクラシックにクオリファイ(話が終わる前に)
ジェラルド:無理だな。ありえない。

basswave:それは……(また話が終わる前に)
ジェラルド:言いたくないけど、歳なのかもね。さっきも言ったけど、私たち“ヤング・ガンズ(young guns = 若くて鉄砲のように勢いのある世代を示す表現)”はジムに行って鍛えている。釣りの時間を割いてでも肉体改造に勤しんでいるし、食事面でも気を遣っている。情報面でも若いアングラーはコンピュータで整理して、膨大なデータを分析するのに入れ込んでるヤツもいる。技術面、特に新しいテクニックを取り入れる早さ、それを自分のものにするのも私たちは速い。若い世代は、タカヒロ(大森貴洋さん)も含めて、“有名バスプロ”と呼ばれた世代に引けを取らない。いや、勝っていると思っている。リックも強いし頑張っているけどね。これが現実なんだ。

basswave:今、「バスプロとしてのレベルの差が狭まっている、また勝っている」という話が出ましたので、質問します。FLWツアーとバスマスターツアーとでは、差があると思いますか?
マーティー:確実に選手層の面で差があると思う。私はもう2年出ていない。CITGOツアー(彼らはバスマスターツアーをこう呼んでいた)のほうがレベルは高いと思う。

basswave:逆に言うと、FLWは“(皮肉っぽく)イージー”ということですか?
マーティー:イージーとは言わない。でも、そうなのかもしれないね。それは私たちだけじゃなくて、CITGOツアーを主戦場にする多くのアングラーも感じていると思うよ。
ジェラルド:BASSがこれくらいだとすると(190cmはあるジェラルドの目線)、FLWはここくらいだ(胸あたりを示した)。誤解しないでほしいんだけど、FLWを見下しているわけではない。いろんな面でFLWがBASSに勝っている部分も確かにあるし。

basswave:それは賞金のことですか?
マーティー:賞金は大切だよ。チャンピオンシップで勝てたら、それはスゴい金額だからね。

basswave:あなた方にはBASSを支える冠スポンサーのCITGOやトライトンボート、マーキュリーがついています。その肩書きを持ってFLWに出場するのは難しいですか?
ジェラルド:これはノーコメントにしとくよ。ただFLW参戦を断念してCITGOツアーに集中しようか思案中のとき、いろんな人からアドバイスをもらった。最終的に、BASSでキャリアを高めたいと思った。
マーティー:1ヶ月1試合のFLWのほうがメンタル的、フィジカル的に調整しやすい。「これなら勝てる!」という状態を作りやすい。でも両方を転戦するには時間と費用がかかり過ぎる。
ジェラルド:これも誤解してほしくないんだけど、私たちは、まだまだ本当の意味でのトップレベルではない。だから、そんなにいい契約金をもらっているわけではないんだよ。エントリーフィーを払ってくれるメーカーがあったとしても、ツアーを転戦して、家族を養ってと考えると……現実的にならざるを得ないだろ?。なるべくスポンサー主催、ストア主催のセミナーにたくさん参加して、出演料を稼ぐようにしている(笑)。


basswave:かなり現実的な話をありがとうございます。全体的にジェラルドのほうがたくさん話していた気がしますので、最後にマーティーに伺います。今季バスマスターツアー第1戦で優勝しましたが、実はその開催地であるフロリダ州ハリスチェーンで、私も何度か釣りをした経験があります。そんなにいい思いをした記憶がないのですが、試合ではどうでしたか?
マーティー:ハリスには振り回されたよ。CITGOツアーがハリスで開催されるようになって今年で2年めだけど、昨シーズンの大会では、最初の2日間(予選ラウンド)で1回もバイトがなかった。ゼロさ。釣りあげた尾数がゼロじゃなくて、バイトがゼロだったんだ。頭が痛かった(苦笑)。第2戦のプラを迎えても気持ちが切り替わらないくらいショックだったよ。

basswave:そう思って調べてきました。あの試合で2日間連続ノーフィッシュの選手は18名いました。しかも予選のトップウエイトは21Lb10ozでした。
マーティー:優勝したのはラッキークラフトU.S.A.のチームメイト、スキート・リースだった。優勝ルアーもラッキークラフト社のFlat CBだった。それで今年は気分を入れ換えて、あの試合はなかったことにした(苦笑)。初めてハリスで釣る気分でレイクに向かった。すると、そんな気分だったからなのか、今年はいるところにはバスがいると感じた。バイトは少ないけど、これを獲れば上位に絡めるかもと思っていたんだ。試合では、バスは釣れるがウエイトは伸び悩んだけどね。大会中に10パウンダーも釣れているし、そんなのを決勝ラウンドで誰かに持ち込まれたら、もう終わりだと思ったけど。

basswave:一方で自身が10パウンダーを持ち込む可能性もあるわけで……。
マーティー:でも私はサイトフィッシングをメインにしたフリッピングをやっていた。ライトフリッピングと呼んでいるだんけど、冬場でも天気のいい日はフリッピングがキーとなるケースがある。でもバスの活性は低いからセンコーのような高比重のスティックベイトでライトフリッピングをやるんだ。ラインは10Lbだった。

basswave:いくら低活性とはいえ、10パウンダーの可能性もあるのに、10Lbラインはキツイのでは?フロロカーボンラインですか?
マーティー:10パウンダーがきたらラインブレイクするかもしれない(苦笑)。でも、私は4パウンダーを5尾で20Lbを目標に釣っていた。3日めは19Lbをウエイインしたから、それに近い。ラインはP-Line社のモノフィラメント。ラインブレイクしないようにラインはよくチェックするよ。

basswave:最終日はスピナーベイトに変更しましたよね。
マーティー:スピナーベイトで手返しよく釣りたかった。このテクニックでバスが反応するのかはわからなかったけど、自分を信じた。3日め19Lbをウエイインしたけど、4日めはそれより軽かったから、最後の最後まで勝てるとは思わなかった。去年はノーバイトで、今年は優勝さ。バス釣りは難しいね(笑)。


 今回は短い時間ではあったが、面白い話が聞けた。まさかプロアングラーから肉体改造の話題が飛び出すとは、まったくの想像外だった。ある意味、「肉体改造や食事制限からはもっとも遠い場所にいる人たち」と思っていたが、ここにきてバス釣りがやはりひとつのスポーツであり、アングラーもアスリートであることを見直す時代にきていると感じた。
 
 リック・クラン低迷の話も衝撃的だった。大森貴洋さんはクランのセミナーに今でも自ら出向いて話を聞いているという。そしてクランの養子になって、「タカヒロ・クランになりたい」と思うくらい尊敬しているとか。そのクランがスランプに陥っている。ジェラルドはクランの再浮上を「ありえない」、また「これが現実だ」と言った。何か寂しい気分になった。
 大森さんとは世代が異なるが、私もクランやラリー・ニクソン、ギド・ヒブドン、ジャック・チャンセラーの活躍を見て育った。アメリカは夢の世界であり、彼らはヒーローだった。大森さんはクラシックを制覇したことで、自身のヒーローたちと肩を並べるキャリアへ到達したが、ジェラルド的にいえば、今や実力はそんなヒーローたちより大森さんのほうが上ということになるし、今後はその差も浮き彫りになるという。
 数年前の月刊Basser誌に「トーナメントに『定年』はあるのか?」という記事が掲載されていた。肉体的に衰えはしても、経験は積み重ねられるし、情熱も消失しなければ……と。ジェラルドは明言しなかったが、「ベテラン勢の定年もすぐそこに……」と言いかねない雰囲気だった。
 手首の負傷で昨シーズン後手術を行なったラリー・ニクソンは、FLWツアー第1戦の初日、28Lb6ozをウエイインしオキチョビー大会の最大ワンデー・ウエイト記録を樹立した。BASS CITGOバスマスターツアー第5戦では、背中の手術を経て復帰したデニー・ブラウワーが優勝した。まだまだベテラン勢も元気なように思える。
 しかし、FLWツアー第1戦の勝者はルーキー、レイ・シェイーデ。FLWツアーのAOYも同じくルーキーの深江真一さんが獲得し、チャンピオンシップも若手のルーク・クラウセンが奪取した。ブラウワーが優勝した大会の2位にはルーキーのビンク・デサーロが入り、今季両団体にて大いに暴れ回ったグレッグ・ハックニーもまだ30歳の若手である。その反面、ショー・グリズビーは心臓手術を理由にElite50出場を辞退している。
 アメリカではバス釣り界における世代交代が起ころうとしている……彼らの話を聞いて、そんなことを考えさせられてしまった。ただし、彼らもけっして神様ではない。クラン、ニクソン、そしてローランド・マーチンらが再びヒーローとして光輝く可能性もまたゼロではないし、そんなベテラン勢の活躍にも期待したくなる。プロトーナメントの世界は、追求すればするほど興味深いものだと改めて感じた。

Posted by DODGE at 2004年08月26日 14:44 in 海外トーナメント:BASS

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