2004年07月20日

炎暑の中でコイヘルペス対策、撃退のカギは水温管理

 猛暑とともに拡大するコイヘルペスウイルス病(KHV)の感染に歯止めをかけようと、ニシキゴイの産地や淡水魚の専門家らの模索が続いている。
 今のところ有力視されているのは水温コントロール。18度以上で活動が活発になり、30度を超すと増殖が止まるというウイルスの特性に着目、あえてウイルスが好む水温で飼育して発症しないことを確認した上で「安全なコイ」として出荷したり、高い水温を活用した治療法を研究したり。炎暑の中の戦いが続く。

 ニシキゴイの生産者や流通業者でつくる全日本錦鯉振興会の吉田俊一副理事長によると、輸出も含めて年間販売額約60億円という市場は、風評被害もあって、KHVの流行が初めて確認された昨年以降、販売額は例年の7割ほどまで落ち込んでいるという。

 業界がKHV対策として注目しているのが、これまで越冬期に一部業者が利用してきた「昇温設備付き隔離池」。

 そもそもは、水温を一定以上に保つことにより、冬場でもコイの成長を促すことなどが目的の設備だが、感染の有無を判別する手立てとしてクローズアップされている。

 狙いは「安全なコイ」のアピール。まずは、隔離池の水温をウイルスの活動が最も活発になる18-25度に設定。仕入れたコイを放して、2-3週間とされる潜伏期間が過ぎても症状が現れなければ、感染していないと確認出来たことになるという訳だ。

 小千谷市を中心に、生産量で全国の6割を占める新潟県では、4月からこの種の隔離池を新設する業者への補助制度を始めた。県が事業費の半額(上限2000万円)を助成するというもので、6月末までに計14件の申請があった。

 水産総合研究センター養殖研究所(三重県南勢町)を中心に、東京海洋大や北海道大なども加わって4月から始まった共同研究の中でクローズアップされているのも、「水温」だ。

 同研究所の三輪理・病原体制御研究グループ長によると、低温にも高温にも弱く、13度以下では発症せず、逆に水温が30度を超えると増殖が止まるというのがKHVの大きな特徴。このため、コイを弱らせず、かつウイルスを撃退できる温度と時間を特定できれば、治療法につながる可能性があるという。

 観賞魚としての商品価値を落とさずに、いかに治療に有効な温度と時間を割り出すか。三輪グループ長は「来年度早々にも治療法を提示できれば」と話している。

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 対策に資金と手間をかけられるニシキゴイに対し、河川などの天然水域や食用コイの養殖池では、水温の上昇に伴い、被害が広がり始めている。

 農水省によると、昨年11月、国内で初めて茨城県の霞ヶ浦でKHV発生が確認されて以来、ピーク時には北海道と四国を除く34都府県に広がっている。霞ヶ浦の事例から今年3月15日までの冬場の発生地点は全国で97か所だったが、この日から6月20日までの約3か月で281か所にまで増加した。

 感染拡大防止のため、養殖コイ最大の産地・霞ヶ浦では3月、全養殖業者の網いけすのコイ約2500トンが焼却処分されたほか、6月には福岡県浮羽町でも600トンが処分された。

 処分から約3か月が過ぎた6月28日、茨城県内水面水産試験場は、ウイルスに感染していないことを確認した稚魚約2000匹を霞ヶ浦の網いけすに放して試験飼育を始めた。今のところ発症の報告はないが、同県漁政課は「安全と確認するには時間が必要で、いつ養殖が再開できるかは分からない」としている。

 ◆コイヘルペスウイルス病=コイ特有の病気で、発症した場合にコイが死ぬ確率は100%近いが、感染したコイを食べても問題はない。1997年、イスラエルで発生し、欧州やアジアなど世界に広がった。

+Yahoo!ニュース-社会-読売新聞社

Posted by DODGE at 2004年07月20日 09:45 in KHV関連, 魚&水棲生物, 自然環境関連

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